: 不変部分空間
: Dsys
: ケーリー・ハミルトンの定理
まず今までのお話のおさらいをします.
時不変な離散時間線形システムの状態方程式
について調べてきました.
初期点 から から まで(5)式の系に何らかの 個の制御量
を加えた場合 は
|
(41) |
となります.
から まで(5),(26)式の系に何らかの 個の制御量
を加えて
任意の から出発して
と変化させ,
最後の がある目標の と等しく
なるようにできる場合,系(5),(26)は「(完全)可制御」であるといいます.このための条件は
でした.
また, と
から を決定することができるというのが可観測性でした.
ただし,
でした.
[ケーリー・ハミルトンの定理]
の特性方程式を
とするとき:
|
(42) |
が成立っていました.
以上が今までのおさらいです.
さて,そもそも制御性の条件は(41)式を行列 を使って
と変形し,
任意の
に対し
として
を充たす が存在する条件を求めました.
上で, にとった
を可制御性
にとった,
を可到達性と言います.
可制御性は任意に与えられた初期点 から原点へ動かせる が存在するかどうか,
可到達性は原点から任意に与えられた点 へ動かせる が存在するかどうか,です.
以後,議論を簡単にするため とします.これは の逆行列が存在することを意味し,この場合は,
が解けることになり,
可制御性と可到達性は同値になります.
用語の解説は,専門の教科書にお願いするとして,今後,可制御性(=可到達性)
を考察します.
この場合も
です.
[箸にも棒にもかからぬ]
これからが本題です.可制御性や,可観測性の条件が,充たされない場合
すなわち,
のときや ときはどうなってしまうのか?
ということです.
の場合どんなに
を選んでも の選び方によっては
が充たされないということが起きてしまいます.
( に到達できないわけです.)
「成せばなる,成さねば成らぬ何事も,成らぬは人の成さぬなり」
(クリントン前米国大統領も,尊敬したという上杉鷹山)
なんて言ってられなくなります.
で,系がこの に,
を選べば到達できるものすなわち
を充たす, が存在するも全体を
で定義します.
可制御部分空間なんて名前があるのですが,箸にかかる要素の集合とでも呼びます.
可観測性の条件についても,同様なことが起きます.
そもそも可観測性の条件は,既に判っている系の係数行列 と
系に加えた制御
と
それによる出力
から
造られるベクトル と による方程式
が について解けるかどうかの条件でした.
の場合, について で
となることが起きます.
ですから が と区別できなくなります.
このような の集合を,
で定義します.不可観測部分空間などと呼ぶのですが,棒にもかからない集合
とでも呼びます.
系の方程式
は状態変数 の要素を4つに分け
と表現することにより,4つのパーツに分解することができます.
「カルマンの分解」
: 不変部分空間
: Dsys
: ケーリー・ハミルトンの定理
Yasunari SHIDAMA