next up previous
: 最短曲線 : optimization : 分岐限定法

変分問題(等周問題)

変分問題などと書くと何やら難しい数学がでてきそうですが

紐の両端を結んで輪にして,テーブルに載せ色々な形の図形を作るのを想像してください。長方形でも,正方形でも,平行四辺形でも,台形でも,楕円でも円でも,三角形でも,歪なじゃがいもみたいな図形でも結構です。

今日の話題はそれらの図形の内,それで囲まれる面積が最大なものは何かというものです。ややこしくなるので,8の字のように中でくびれているのは「ナシ」にします。 ですから,楕円やジャガイモ,四角形のような単純な図形を思い浮かべてください。 どんな図形を作っても,紐が伸び縮みしないとすると,図形の周囲の長さは一定です。
古代の問題

「周囲の長さが一定な図形のうち,それで囲まれる面積が最大なものを求めよ」

図形の中心付近に原点$O$を置き,図形の周上の点を座標で表しましょう。 ここで,普通の座標ではなく,局座標を使ってみます。これは,原点からその点までの距離$r$と,原点を通って水平な軸から,その点をまでを,原点を中心にして,時計と反対周りに計った角度$\theta$―ギリシャ文字のシータ―の対で$(r,\theta)$で表します。

後の計算を楽にするため角度$\theta$はラジアン単位で表すことにします。

高校時代習ったと思いますが,$2\pi$を360度する角度の表示法です。 例えば60度なら $2\pi\times60/360=1/3\pi$ラジアン

$\theta$は0から$2\pi$まで動き,それに伴って,図形の周上の点は,その周囲を一周してきます。その間,図形が円でなければ,原点Oとその点との距離$r$は一定でなく変化します。 角度$\theta$に依存しますので$r(\theta)$と書いておきます。

さて,図形の周上の2点$P$$Q$の座標が, $P=(r(\theta),\theta) Q=(r(\theta'),\theta')$ のとき,点$P$$Q$が近くにあれば,角度の差 $\mit\Delta\theta=\theta'-\theta$は小さくなります。 原点OとP,Qで作られる中心角 $\mit\Delta \theta$の扇形の弧の長さ$\Delta l$


\begin{displaymath}
\Delta l=\sqrt{r(\theta)^2+\dot{r(\theta)}^2}
≒\sqrt{r(\theta)^2+\{\frac{r(\theta')-r(\theta)}{\Delta\theta}\}^2}
\end{displaymath}

で近似でき,その面積は,円弧を略,直線(底辺)と見なしてできる三角形の面積,

\begin{displaymath}r(\theta)\mit\Delta \theta \times r(\theta)/2
=r(\theta)^2\mit\Delta \theta /2
\end{displaymath}

で近似できます。

それぞれ,隣りあった点の角度の差 $\mit\Delta \theta$が十分小さく,話を簡単にするため一定になるように,点の数を十分多く取ります。 例えば,$N$を十分大きくして,

\begin{displaymath}\mit\Delta \theta=2\pi /N\end{displaymath}

となるように図形の周囲上の点を

\begin{displaymath}P_1,P_2,\cdots,P_N\end{displaymath}

を決めたとします。

\begin{eqnarray*}
&&P_1=(r(0),0), P_2=(r(\mit\Delta \theta),\mit\Delta \theta),\\
&&\cdots, P_N=(r((N-1)\mit\Delta \theta),(N-1)\mit\Delta \theta)
\end{eqnarray*}



面倒なので,

\begin{displaymath}r_1=r(0),r_2=r(\mit\Delta \theta),\cdots,r_N=r((N-1)\mit
\Delta \theta)
\end{displaymath}

としておきます。

図形の周の長さ$l$は,それぞれの扇形の弧の長さの総和で近似でき

\begin{eqnarray*}
&& l≒\Delta l_1+\Delta l_2+\Delta l_3+…\Delta l_N\\
&& 0 \l...
...lta l_{N}=\sqrt{{r_{N}}^2+\{\frac{r_{0}-r_N}{\Delta\theta}\}^2}
\end{eqnarray*}



です。また 図形の周で囲まれる面積Sは,それぞれの扇形の面積の総和で近似でき

\begin{displaymath}
S≒{r_1^2+r_2^2+r_3^2+…r_N^2}\mit\Delta\theta/2
\end{displaymath}

です。

ここで,紐の長さを簡単のため$2\pi$としておきます。 すると問題は $l=2\pi$という制約条件の下で,$S$が最大になるよう$r_1$$r_2$$r_3$,…,$r_N$を決める問題になります。 試しに$N=10$ぐらいにして,Excelのsolverなどで解いてみてください。

問題の解は,一体,どんな図形でしょうか?


next up previous
: 最短曲線 : optimization : 分岐限定法
Yasunari SHIDAMA