- 定理7(命題計算の妥当性)
-
ならば が恒真論理式である。
この定理は,命題計算の体系についての妥当性と呼ばれるものである。
- 妥当性の証明
-
が成立すればが恒真論理式であることを示そう。
が成り立つとすると,
系の「証明」である論理式の列
があって,は最後のと一致しているものとしてよい。
各は
- (1).
- 公理系の各公理の形の論理式である。この場合,各公理は恒真論理式
であるからは恒真論理式である。
- (2).
- 論理式 の前に論理式 と
があり,は
の
形をしている。
より前の論理式は恒真論理式であると仮定すると,
と
が真理値しかとらないから真理値表
から明らかなようにの真理値はしか取り得ない。
すなわちは恒真論理式である。
- 定理8(命題計算の無矛盾性)
-
命題論理の公理系は無矛盾である。
すなわち
となるような論理式は存在しない。
この定理は,命題計算の体系についての無矛盾性と呼ばれるものである。
- 無矛盾性の証明
-
公理系が矛盾すれば
定理6により任意の論理式が証明可能である。
従って,は定理7により恒真論理式である。
しかるに,の命題変数は論理式ではあるが恒真論理式
ではない。
- 定理9(命題計算の完全性定理)
-
が恒真論理式であることの必要十分条件は,
が成立することである。
この定理は,命題計算の体系についての完全性定理(completeness
theorem)と呼ばれるものである。
- 完全性定理の証明
-
が成立すればが恒真論理式であることは
妥当性の定理で既に証明済みである。
逆にが恒真論理式であるときに,
が成立することをいうには次の補題が必要になる。
- 補題
-
が命題変数
から構成される論理式とする。
命題変数
に真理値をふり当て,そのふり当てに対しの真理値がである場合
の真理値がである場合
である。ただし,はに対する真理値のふり当てがの場合,の場合はとする。
- 定理9の証明の続き
-
恒真論理式が命題変数
から構成されるものとする。
命題変数
に真理値をどのようにふり当てても,
の真理値は常にである。
命題変数
に真理値どのようにふり当てるしかたは
通りある。これを辞書式順序で全て列挙し[補題]を適用すると
が得られる。最初の2式から演繹定理により
これから公理と,公理を用いて;
が得られる。すなわちが消去された。同様にして順次に2式ずつ
同じ手順を繰り返せば,が消去された個の式を得る。この
個の式からを2式ずつをとり同じ手順を繰り返すとが
消去された個の式を得る。
この手順を繰り返せば変数
が全て消去され,結局
を得る。
- 補題の証明
-
- 論理式がただ1つの命題変数からなるとき
に対するふり当てがのとき
のとき
これは公理のから容易に示される。
これ以外の場合は,は
の形をして
いる。この場合,部分式については
この補題が成り立つものとする。
- がである場合
の値がのときの値はであるから
の値がのときの値はであるから
はそれぞれ及びである。
- がである場合
の値がのときの少なくともどちらか一方の値は
であるから,の値がとしても一般性を失わない。このとき
が成り立っている。これと公理の
により
はに他ならない。
の値がのときの値はともにでなければならない。
このとき
これに推論法則の「論理積」
を用いて
を得る。
は
に他ならない。
- が
である場合
の値がのときの値はともにでなければならない。
このとき
これに推論法則の「論理積」
を用いて
を得る。
はに他ならない。
の値がのときの少なくともどちらか一方の値は
であるから,の値がとしても一般性を失わない。このとき
が成り立っている。これと公理の
により
は
に他ならない。