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基本的な論理演算

整数の集合${\bf Z}$上の演算$+$については 具体的な数と数の演算が

\begin{displaymath}0+0=0,\quad 0+1=1,\quad 1+0=1,\quad 1+1=2,\quad \cdots\end{displaymath}

が定義されていた。これと同様に 真理値の集合 ${\bf V}=\{T,F\}$上の論理記号 $\lnot,\land,\lor,\Rightarrow$ による演算についても定義を与えよう。${\bf V}$の要素である真理値は2個しかないので,次のように表で定義することができる。

  1. 否定$\lnot$
    「否定」の日常的な意味からも命題$X$$\lnot$を作用させた$\lnot X$$X$$T,F$(真,偽)であるときにその反対に$F,T$(偽,真)となると定めるのが自然である。 これを表で表しておこう。
    $X$ $\lnot X$
    $T$ $F$
    $F$ $T$

  2. 論理積$\land$ (「かつ」)
    2つの命題$X,Y$の真理値が両方とも$T$(真)のときに限り$X \land Y$の真理値は$T$(真)となるものと 定める。
    $X$ $Y$ $X \land Y$
    $T$ $T$ $T$
    $T$ $F$ $F$
    $F$ $T$ $F$
    $F$ $F$ $F$

  3. 論理和$\lor $ (「または」)
    2つの命題$X,Y$の真理値が少なくともどちらかが$T$(真) のときに$X \lor Y$の真理値を$T$(真)と定める。
    $X$ $Y$ $X \lor Y$
    $T$ $T$ $T$
    $T$ $F$ $T$
    $F$ $T$ $T$
    $F$ $F$ $F$

  4. 含意$\Rightarrow$ (「ならば」)
    2つの命題$X,Y$が与えられたとき, $X \Rightarrow Y$ の真理値をどう定めるかというのは少し工夫がいる。なぜならば命題$X,Y$と 表されているのはその中身の主張を無視して真理値だけを問題にしているからで 通常の

    \begin{displaymath}
明日の天気が雪 ならば 私は傘をもっていく。
\end{displaymath}

    といった、命題と命題の中身の関係は無視している。

    \begin{displaymath}
今日の昼食がカレーライス ならば 明日は天気
\end{displaymath}

    でも,論理式 $X \Rightarrow Y$ の形にはなっている。そこで $X \Rightarrow Y$の否定を考えることにする。 上の例なら

    \begin{displaymath}
明日の天気は雪 でも(かつ) 私は傘をもっていかない
\end{displaymath}

    とか

    \begin{displaymath}
今日の昼食がカレーライス でも(かつ) 明日は天気でない
\end{displaymath}

    いう命題で論理式

    \begin{displaymath}
X \land \lnot Y
\end{displaymath}

    である。これの真理値ならば既に示した$\lnot$$\land$の表を用いて
    $X$ $Y$ $\lnot Y $ $X \land \lnot Y$
    $T$ $T$ $F$ $F$
    $T$ $F$ $T$ $T$
    $F$ $T$ $F$ $F$
    $F$ $F$ $T$ $F$
    となる。そこで, $X \Rightarrow Y$ $X \land \lnot Y$ の否定として上の表の第四列の値を反転させて
    $X$ $Y$ $X \Rightarrow Y$
    $T$ $T$ $T$
    $T$ $F$ $F$
    $F$ $T$ $T$
    $F$ $F$ $T$
    で定義される。この表は容易に確かめられるように $\lnot X \lor Y$の表とも一致している。

    課題  $X \Rightarrow Y$ $\lnot X \lor Y$の表が一致することを 確かめること。

    注意しなければならないのは $X \Rightarrow Y$の否定 $X \land \lnot Y$を作り, さらにこれの否定を作っていることである。 真理値は真,偽$T,F$しかないのでそういうことができた。

    \begin{displaymath}
貴方を好きでないことはない。
\end{displaymath}

    と恋人に言われてもそれ程嬉しくはないだろう。


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Yasunari SHIDAMA