数学などの自然科学や工学の分野では,ニュートンヤライプニッツの積分記号のように,事物や事物の性質を表すのに記号を用いてきました。
それらの歴史は,考案され使われてきた記号の歴史といっても良いぐらいです。
集合論は「ものの集まり」である集合を扱いますが,集合とその要素を表したり,集合と集合,集合と要素,要素と要素の関係を表すのには記号を用います。この教材で用いる記号は以下のものです。
集合や集合の性質を表すには,これらの記号は単独で使うのではなく,
のように記号を並べた記号の列を用います。ここでは,その列を「式」と呼ぶことにします。
式には,集合やその要素,すなわち何かの対象を表すものとして対象式があり,
また,それらの対象と対象の間の関係を表す関係式があります。関係式は論理式とも呼ばれます。
対象式や関係式は以下のように組織的に作られます。
まず対象式は次の通りです。
関係式については以下の通りです。
以上のような記号表現によって,例えば
「すべてのについてが集合の要素ならばは集合の要素である。」
といような主張を関係式として
さて,数学や他の自然科学に限らず,何らかの事物の性質や関係を論理的に捕らえようとすると
これらの,推論法,「ある事柄が正しいとを証明する方法」あるいは「既に正しいと証明されている事柄から新たな正しい事柄を導き証明する」方法,については古代ギリシャから研究され,その学問は論理学と呼ばれています。ユーグリッドの平面幾何学にも使われています。
論理学は数学,科学の発達と伴に発達してきました。近年,論理学に,前の節で述べたような記号による表現とともに,数学,特に代数学の手法が取り入れられ,記号論理学とか数理論理学と呼ばれる分野が生まれました。
これを概観しておきます。
例えば,
「は1と等しくない。」 という主張について考えてみましょう。 これは,前節の記号表現を用いれば,関係式
また,
「が1と等しくかつは1と等しい」
は,関係式
この関係式は,との両方が真のときだけ,真になります。
同様に「またはである。」
という主張は
全ての対象がという主張を表すには全称記号を用いて