: 補足1:少し神経質なお話
: 変分法
: 変分問題
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変分問題2
さて,始めに挙げた線分の長さを最小にする問題に戻りましょう。再度,書けば,
問題 汎関数
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(2.9) |
を境界条件
のもとに最小にする
を求めよ。
[解法]
は
で最小と
仮定します。
となる任意の をとります。
とおくと,
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(2.10) |
となります。
をとり
とします。 のとき
となります。
ここで を
とおきます。 は で
となるから最小です。そこでと問題その1と同様にして
補題1.1.1を適用します。
補題2.1.1(再述)
が で微分可能かつ極小ならば
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(2.11) |
(証明済)
この補題を適用するため, の における微分可能性を
示し
を求めることにします。
まず,
と変形します。
ところで,
の定義は
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(2.12) |
でした。基本的には問題1と同様な計算過程を経て
を得ます。
式(2.13) 導出
式の展開を見やすくするため
とおきます。
各について
を計算すれば
となります。
式(2.13)では,極限記号と積分の記号の交換
が行われます。
このようなことは可能でしょうか?「問題その1」の場合はが単純に積分記号の外側
に出ていました。それでこんな心配は要らなかったわけです。
そこで,極限記号と積分記号の交換について調べてみます。これも学部1年次の微積分の
講義で習った 「一様収束」の復習です。
目標はのとき が
に区間上で一様収束することを示すことです。
この一様収束とは,任意の正数
に対して,そののみ
依存して決まるある正数
が存在して,
ならば 区間上の任意の
に対して
が成立つことです。
がのときに関し一様にに近づくことを意味します。
このとき,
ならば,
という評価式が得られ,
結局
すなわち,
が成立ちます。
さて,一様収束性に証明にとりかかりましょう。
先ず,を固定した
は上の連続微分可能な関数であり, で 2 回微分可能です。
を について2 次のテイラー展開をすると
ただし,
は
で定義されます。またに対して,
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(2.14) |
が成立っています。
各項を計算すると,
ですから,
であり,に依存したある
が存在して
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(2.15) |
の大きさはに依存していますが,で抑えれれています。
既に述べたように,
でした。
(2.14)より,
としても一般性を失わないので, とします。
(2.15) より,はについて連続です。
は有界な領域
上を動くものとしてよいから,
ある正数 が存在して,任意のとに対して
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(2.16) |
が得られます。(2.5節の補足で証明します。)
そこで,
とおきます。
ならば,任意のに対して,
よって, はのときに関し一様にに収束します。
既に述べたが
ならば,
すなわち,
以上より,
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(2.17) |
はで微分可能で極小値をもつから,補題2.1.1より
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(2.18) |
これに問題1と同様に以下のハールの補題を適用します。
補題2.2.1(ハールの補題:再述)
が上で連続で,
となるすべての
に対して
を満たすならば,
ある定数が存在し
(証明済)
これを用いると,(2.18) において
は任意で,
ゆえ,ある定数が存在して,
これから
と置くと,
より
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(2.19) |
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Yasunari SHIDAMA